東京公園

2011年11月3日
東京公園

東京公園

 ギンレイ。小路幸也原作の本作と、中上健次の遺作「軽蔑」の2本立て。
ちょっとこの組み合わせはどうなんやろ、というぐらい空気感も時代背景も違う2本。

 「東京〇〇」と名のつく作品は、もちろん小津の東京物語なのだが、
私的には市川準の「東京兄妹」「東京夜曲」「東京マリーゴールド」を思い出す。

 さて本作だが、まずはじめに、青山真治は私は食わず嫌いだった。
邦画を最も見ていた大学時代にHelpless-チンピラ-シェイディグローブと話題作をリリースし続けていたわけだが、初めて見たのが宮崎あおいの出世作「EUREKA」で、長いわりに冗長で好きになれず、監督の当時のややむさいロンゲの風貌(失礼!)と相まって、岩井俊二や黒沢清ばかりを選んでいた。

 感想。これは素直によい。
 公園という「人を包み込む」舞台で、風景写真や人物写真を趣味で撮る三浦春馬演じる光司。ある日、偶然代々木公園で見かけた母子を撮っているところを高橋洋演じる歯科医に咎められ、逆に、その母子が出没するいろいろな公園で母子を尾行して、写真を撮ることを依頼される。

 依頼者が誰で、何のための尾行なのか、ということも明かされないまま、物語がどう展開していくのか期待させるが、実のところそんなに大したこと は起きない。光司の部屋に飾ってある写真家(のちに同姓であり、彼の母の写真であることが想像できる。)が、尾行している女性である井川遥と同一であるこ とはすぐにわかるし、被写体の先の母親がしきりに公園でファインダー越しにこちらを見ていることからも、この女性は盗撮されていることを知りつつ、何らか のメッセージをこちら側に送っていることもわかる。
 さらに、榮倉奈々演じる親友、小西真奈美演じる義姉とのシーンが繰り返されるうちに、徐々に微妙な人間関係のピースが観る者に与えられていく。
実に繊細な演出だと思う。

  「まっすぐに正面から、目を見て(人と向き合って)ごらん。」
 榮倉演じる富永と、光司の間でたびたび交わされる切り返しショットはタイトル通りの小津オマージュ。尾行写真を撮るうちに光司が、義姉や、死んだ友人の親友である富永との関係性を再構築していく過程は、ファインダーを通した写真家と被写体の関係性の点でも、写真家としてもステップアップしていく可能性をすごく期待させる。

 この映画の印象に残るシーンは、言わずもがな。光司と三咲のキスシーン。準備のために化粧をし、食事をし、写真の被写体となり、キスをする。き わめて日常的なシチュエーションで。けじめ、の悲しいキスシーンではありますが、なぜか爽やかで暖かいシーンになっている。家の中なんだけど、そこだけ、 人を包み込む公園のような。この演出だけでも青山真治の希有な力量を見せつけられた気がした。

 もう一つ。もともと青山真治ってのは理屈の人で技巧の人だという印象が、食わず嫌いになっていた理由だが、別に構えなくてもいい映画に仕上がっているというのが、これまでになかったものではないか?
 宇梶剛士の店のカウンターの構造を見ていたら、なんかバーらしくない明るく広い空間になっていて、ああいうバーなら楽しそうで行ってみたいなあ、なんて思った。

 まあ、それでも、劇中オリジナルゾンビ映画とか、幽霊とか、妄想人格崩壊スレスレとか、島田雅彦とか、あちこちに容易ならぬピースがちりばめられている点も極めて青山的で、まだまだ噛み砕くべきことは多いと思うが、ひとまずこの辺で。 

作品紹介

『サッド ヴァケイション』以来、およそ4年ぶりの長編となる青山真治監督作は、「東京バンドワゴン」で人気を博した小路幸也原作の小説を映画化。カメラマン志望の 青年に突然舞い込んだある依頼をきっかけに、何でも話せる幼なじみ、いつも優しく支えてくれる義理の姉、記憶の中の誰かに似ている被写体の女性-彼を取り 巻く立場の違う3人の女性と向き合うことになる…。主人公を演じる三浦春馬が、青年期の揺らぐ心情を等身大で表現するとともに、榮倉奈々の明るさ、小西真 奈美の清々しさ、井川遥のミステリアスな魅力が詰まった一作だ。東京の公園に降り注ぐ、うららかな陽射しをバックに語られる各登場人物のドラマが胸にしみ る。

キャスト

  • 三浦春馬 (光司)
  • 榮倉奈々 (富永)
  • 小西真奈美 (美咲)
  • 井川遥 (百合香)
  • 高橋洋 (初島)
  • 染谷将太 (ヒロ)
  • 長野里美
  • 小林隆
  • 宇梶剛士 (マスター)

予告編

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2011年11月1日

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